マンションや住居などの建造物は、柱で支えられており、柱の強度が低下すると、建物の支持性が低下します。
ヒトの体内にある約206個の骨は、建造物の柱の部分に相当します。
ヒトは加齢により骨強度が低下し、特に女性の場合はある年齢を境にホルモンバランスの変化による急速な骨密度低下が著明となる傾向があります。
骨密度の低下は、転倒による骨折のリスクが上昇し、QOLの低下につながるおそれがあります。
また、加齢や運動不足を伴う生活習慣は、運動器の機能低下をもたらし、転倒による外傷や要介護状態のリスクが高まります。
いわゆるロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)になる可能性が出てくるのです。
ロコモ予備軍及びロコモは、推定4700万人に達し、新たな国民病ともいわれております。
食事や適度な日光浴、及びスクワット運動は、骨や筋肉強化に有効であり、ロコモ対策には肝要です。
さらに、加齢に伴う骨密度低下を遅らせることが期待できます。
骨強化に必要な適度な運動
骨は身体の支持作用があり、骨密度低下は骨量が低下し、骨折のリスクが高まります。
骨強化には、筋力強化、適度な日光浴や栄養、そして骨への物理的刺激が必要です。
筋力と骨密度は、比例関係にあるといわれています。
筋肉は、関節をまたいで腱となり骨に付着します。
筋力トレーニングを行うと個人差はありますが、筋肉が肥大します。
肥大した筋肉は、収縮力が大きくなり(筋力が高くなり)、筋肉に付着する骨も適応する為に強度を高める必要がでてきます。
結果、筋力トレーニングにより骨密度が高まるのです。
筋力トレーニングには、様々な種目がありますが、その中でもスクワットは骨密度増加に非常に有効な種目であると考えております。
骨強化には、筋力強化の他に骨に物理的刺激を与えることも有効です。
例えば、空手家が正拳や手刀、そして脛などを鍛えるために、硬いものを叩いたりして当てる部位の鍛錬をします。
鍛錬することで骨に刺激が加わり、骨強化を行っているのです。
また、医療機器にも応用されており、骨折の治癒を早める目的で超音波骨折治療器(オステオトロン)が用いられております。
超音波骨折治療器は、骨折部位に超音波による物理的刺激を与えることで、骨形成を促します。
スクワットは、立位で行う種目であり、長軸方向への物理的刺激が可能です。
また、身体の多くの筋肉を動員します。
スクワットは、強度の高い種目ではありますが、たくさんの筋肉に刺激を与えることが出来ます。
さらに、スクワット動作による下半身強化は、歩行や階段の昇降、そして起居動作が容易になることも期待できます。
スクワットは、骨密度の強化に有効であるスクラクチュラルエクササイズ(背骨に負荷のかかるトレーニング種目)の1つです。
スクラクチュラルエクササイズが骨密度効果に有効である根拠は、文献[1]によると「高重量のウェイトを使った多関節エクササイズを定期的に行っている青年期のトップレベルのウェイトリフターの骨密度は、同年齢のコントロール群と比較してかなり高い値を示す」です。
つまり、適度な運動を定期的に行う事は、筋肉や骨に刺激を与えて、骨密度低下の抑制に有効であることがいえるのです。
骨粗鬆症対策に日光浴と栄養摂取が大切
適度な日光浴や栄養の摂取も骨強化には大切な要素です。
骨の形成・維持には、カルシウムとビタミンDの摂取が必要です。
カルシウムは、骨の発達や維持に必要な栄養素です。
カルシウムの摂取不足は、骨強度を低下させ、骨粗鬆症のリスクが上昇します。
カルシウムは牛乳や魚などに多く含まれているので、なるべく食材から摂取することが望ましいですが、不足分はサプリメントで補うことも必要であると考えております。
また、カルシウムだけでなく、ビタミンDも同時に摂るべきです。
ビタミンDは、カルシウムの腸管での吸収を助ける作用があります。
適度な日光浴により、皮膚が紫外線を吸収し、ビタミンDを合成します。
キノコ類や魚類にビタミンDが多く含まれており、カルシウムと同様、不足分はサプリメントで補うことも大切です。
適度な運動や日光浴、バランスの良い食事は、筋肉や骨強化に肝要であり、骨粗鬆症の進行を抑制することが期待できます。
同時に、ロコモ対策にも非常に有効であると考えております。
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参考文献
- Thomas R. Baechle. Roger W. Earle. 金久博昭(日本語版総監修), NSCA決定版ストレングストレーニング&コンディショニング第3版, ブックハウスHD