鍼（はり）・灸（きゅう）治療は、古くは中国で経験的に行われてきた治療方法です。
日本には江戸時代に伝わり、日本の生活文化に則して発展してきました。
経験的に「このツボに施術すれば良くなる」と思われていたものも、医学の発達と共にそのメカニズムが解明されつつあります。
物理的療法としても注目されているのです。
鍼治療による痛みの軽減効果
鍼治療は、副作用がなく、鎮痛効果が期待できる非常に優れた保存療法です。
細い金属の鍼を身体の中に入れるだけで、痛みが緩和されるなんて疑問に感じられる方は多いでしょう。
研究が進み、鍼治療後における鎮痛効果の根拠が解明されつつあります。
文献等で広く知られている一部についてご紹介します。
ヒトの身体には、痛みに対して、脳内物質である「エンドルフィン」や「エンケファリン」の産生や放出を刺激することで、鎮痛効果を促進させる生理作用があります。
「エンドルフィン」や「エンケファリン」を専門用語で「内因性オピオイド」といいます。
身体に鍼を刺入した状態で通電を行うと、脊髄後角を介して脳内を興奮させ、内因性オピオイドの産生や放出を誘発します。
「エンドルフィン」や「エンケファリン」の濃度の増加は、疼痛制御をもたらします。
これを「内因性オピオイドシステム」といい、鍼治療における鎮痛効果の根拠の一つです。
トリガーポイントに対する鍼の適応
トリガーポイントは、「筋肉の痛み」の一つです。
不良姿勢による反復的な作業、スポーツ活動によるオーバーユース等で「筋肉の痛み」を引き起こします。
その中に「筋筋膜トリガーポイント」によるものがあります。
筋筋膜トリガーポイントは、筋に索状の硬結（索状硬結）を触れることが特徴です。
その索状硬結が引き金となり、「局所」だけでなく、「局所から離れた場所」にも痛みを引き起こします。
トリガーポイントと姿勢
猫背などの反復的な前かがみ作業は、良い姿勢と比較し、筋内を走行する血管に物理的なストレスを与え、血行不良をもたらす可能性があります。
そのような姿勢が長時間続くと、身体に反復的な負荷が加わり、筋肉の硬さを起こしやすくなります。
また、筋肉内で発痛物質や老廃物が滞りやすくなってしまう為、痛みを誘発しやすくなります。
全身に血流が十分に行き届かないと回復の遅延につながる可能性が出てきます。
猫背などの前かがみ姿勢は、筋肉の環境にも良くない影響を与えてしまいます。
日々の良い姿勢の意識付けは、非常に重要なのです。
筋筋膜トリガーポイントは、不安定な姿勢での荷物運びやデスクワーク等による日常動作で起こります。
トリガーポイントによる特徴的な症状として、筋肉内にロープ状の索状硬結を触れ、個人差はありますが、その索状硬結が特定の関連痛パターンを引き起こします。
関連痛パターンは筋肉によって異なります。
例えば、お尻の筋肉の一つである小殿筋にトリガーポイントが存在する場合、小殿筋の関連痛はお尻のみでなく、「太もも」から「ふくらはぎ」の外側や後ろにも痛みを訴える事があります。
筋肉によっては、局所だけでなく、局所と関係のない場所にも痛みを引き起こすことが多いのです。
痛みの種類が筋筋膜トリガーポイントによるものである場合は、痛みを訴える部位ではなく、痛みの元となる索状硬結部位に治療を行う必要があるのです。
トリガーポイント鍼治療
鍼治療は、筋筋膜トリガーポイント治療を行う上で、非常に有効であると考えています。
なぜなら、トリガーポイントは、皮膚の表面ではなく、身体の深層である筋肉内に形成されるからです。
鍼は、体内に刺入することが出来ます。
トリガーポイントに直接アプローチすることが可能なのです。
低周波治療機器等の物理療法やマッサージ、そしてストレッチングなども優れた治療法です。
鍼とそれらの治療との併用が良いと考えております。
また、身体全体の骨格に歪みが生じている可能性もあります。
骨格の歪みは、筋肉の緊張を引き起こします。
筋肉の緊張は、虚血状態を引き起こし、筋肉内に発痛物質（痛みを引き起こす物質）を留め、その発痛物質がさらに筋肉の緊張を誘発してしまうという負のスパイラルを引き起こします。
負のスパイラルを断ち切る方法として、骨格の歪みを整えることが大切になってきます。
筋筋膜トリガーポイントへの治療を行う際は、鍼やストレッチなどの施術だけでなく、身体全体の骨格バランスを整えることが必要であると考えております。
よくあるご質問
- 鍼って痛いですか？
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鍼は痛くありません。
確かに鍼の刺し方も色々あり、中国式の刺し方では痛い場合もあります。
しかし、当院では日本式の細く短い鍼を使っており、太さも髪の毛程度のものです。
注射器のような太い鍼ではありませんのでご安心下さい。
- 鍼・灸治療のあとは、お風呂はいいのですか？
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基本的に大丈夫です。
しかし、鍼治療の後は代謝が高まっていますので、念のため1～2時間位あけましょう。
解らないことはスタッフにお尋ねください。